とあるアルフィスタのある日。 くるまとわいんのスローライフな日々。

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Author:k5
イタリアに住んで十年余。
自動車のデザイン会社で働きながら、好きで集めたミニカーの紹介を中心に、アルファとワインの話を日々の生活の風景を織り交ぜて。

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仮想現実物語  Il Luogo Promesso ~capitolo 3~
Category: Il Luogo Promesso   2 Comments   0 Trackbacks  
前置き)この話は実際に進行中の事象を仮想世界に当て嵌めて表現している。
    登場人物や地名、固有名詞に関しては基本的に想像上のものとする。

前回の話はこちら

capitolo Ⅲ(第三章)

そして5年の時間が流れた。
「なにを今更...」、言葉と裏腹に心が躍る、口元に喜びの端が見える。

私は少しもったいぶって「仕事の都合を見て検討する。」と返信した。
本当は仕事などどうにでもなるし、直ぐにでも会いに行きたかった。
浮かれているのを悟られたくない為の、姑息な強がりである。

しかし連絡が来て1週間後には、黒く大きくなった蛇で“太陽の道”を南に向かっていた。
5年ぶりに訪れた丘陵の狭間にある小さな街、
春の木漏れ日が優しく石畳に墜ちていた。

少し汗ばむ陽気のせいか気持ちが高揚する。否、陽気のせいじゃない。
目の前に佇むFは以前よりも貴賓ある雰囲気に包まれている。

見かけを裏切るかの如く、Fはとても気さくに話だした、
まるで古い友人に逢ったかの様に。
自分の周りの事や街の様子、葡萄の収穫、近所の猫と老人たちの生活、
矢継ぎ早に話題を変え話しが止まらないのは、何かを隠すためなのか。
私の仕事の事、最近の体調、旅先で見た景色、共通の知人の近況と、
急き立てるように質問を浴びせるのは、逆に質問をさせたくないからなのか。

私も敢えてその事に触れるつもりはなかった。
Fと例の男性との関係が既に終わっている事は人伝えで聞いている。
彼女が話したくないのなら、それで構わないと思った。

紅茶を口にする間の静寂さは、まるで時が止まったかと感じるくらいだ。
ジノリのティーカップをソーサーに戻し、なにかを決意したかの如く目を開いたFは、
まっすぐに私の目を見て再び語りだした。

「私、今まで一人で頑張って来たわ。でも、もう無理みたい。」
「助けてくれる人が、あなたのような人が必要なの。」

私は彼女の目を見つめ返して、こう言った。

「私はそのために此処にいる」

そして暫く時間は止まった。



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仮想現実物語  Il Luogo Promesso ~capitolo 2~
Category: Il Luogo Promesso   4 Comments   0 Trackbacks  
前置き)この話は実際に進行中の事象を仮想世界に当て嵌めて表現している。
    登場人物や地名、固有名詞に関しては基本的に想像上のものとする。

前回の話はこちら

capitolo 2(第二章)

果たしてFとの約束は守られなかった。すっぽかされたのである。
申し訳なさそうな顔をした仲介してくれた知人は、
ちゃんとした理由を説明することも無く、次の機会を保障すると言い残し立ち去った。
意気込んで臨んだだけに、どっと疲れがおしよせた。

数日も経たないうちに“次の機会”なるものが訪れた。
またしてもイソイソと銀蛇で丘の向こうへ。
前回の事があるので変な気負いも無く、幾分と気分は楽だった。

そのせいか、久しぶりに見るFを前にしても自然に接することが出来た。
会話も弾み、短い時間でもお互いを知るのに十分だった。

Fは私のことを昔から知って、興味を持っていた事を打ち明けた。
私も同じことを話し、どれだけ彼女に会いたかったかを伝えた。

こうして、やっと叶った巡り合わせは終わりを迎えようとしている頃、
Fは呟くように言った。

「私、親の決めた相手と結婚するの。でも、その前に一度あなたとお話がしたかった。」
乾いた風が二人の間をすり抜けた。期待する気持ちが込み上げるを抑えている自分がいた。
「私が住むこの場所に、...」刹那、言葉を止めた。「この場所に来れるかしら?」

その言葉を聴いてすべてを理解した。何故、Fは私に会おうとしたか。
返事はもちろん“Si”だった。

しかし次の瞬間、私は答えに躊躇している事に気がついた。
私が居る場所では新しい生活が始まったばかりである。
今までに手に入れた色々なモノが、そこにはある。
そのすべてを投げ打って行けるのか?
頭の中での葛藤は心臓の鼓動一回分の間であった。
だが彼女が事を悟るのに、余りあるほどの時に値したのだろう。

私はFとまた会うという約束を、守られることがない約束を交わし、その場を後にした。

それから一月が経とうとする頃、一通の手紙が届いた。
Fの一族と分かる家紋が捺された一枚の紙には事務的に、
父親の仕事の関係会社の若い男性とFが婚約したと記されていた。

つづく。

テーマ : イタリア生活    ジャンル : 海外情報

仮想現実物語  Il Luogo Promesso ~capitolo 1~
Category: Il Luogo Promesso   2 Comments   0 Trackbacks  
前置き)この話は実際に進行中の事象を仮想世界に当て嵌めて表現している。
     登場人物や地名、固有名詞に関しては基本的に想像上のものとする。

前回の話はこちら

capitolo 1(第一章)

「今更なにを言ってるんだ。」
そう呟いたのは負け惜しみから。
私が期待していたのを彼女は知っていたと思えたからだ。

もう、あれから5年も経ったのだ。

あの時の私は今までの生活に区切りを付け、
喧騒を離れてトリノの郊外に移り住み、
新しい家で新たな暮らしを手に入れたばかりだった。

そんな時、共通の知人の紹介で彼女に会うことになった。
彼女、Fの事は以前から知っていた。
学生の頃は、憧れの、いつも遠くで思うだけの存在で、
まさかFと会って話しができるとは想像すらしなかった。

エミリア地方のなだらかな丘陵の緑が豊かな地にFは住んでいる。
何度となく訪れたことのあるその場所に、
思いもよらぬ幸運に胸の高まりを感じつつ
メタリック・シルヴァーのアルファを走らせた。

気持ちが逸り過ぎたせいで約束の時間より早く着いてしまった私は、
街から少し離れたワインディングを流しながら、少し落ち着こうと考えた。

枝だけの葡萄畑の脇を駆け、農家の並ぶ細い古道から抜けると、
いきなり広い視界が目の前にひらけた。

そこは黄金に輝く空に映える、波打つ丘の一面の緑が続く世界。
天国があるというなら、こういう所だろう。

ふと脳裏に浮かんだ言葉。

「The Promised Land」

きっと、またこの地に戻ってくる。
なんとなく、そんな予感がした。

Continua。

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仮想現実物語  Il Luogo Promesso ~capitolo 0~
Category: Il Luogo Promesso   4 Comments   0 Trackbacks  
ちょっと新しい事でショート・ストーリーなるものを試してみようと思う。
いつまで続くことやら。

(前置き)この話は実際に進行中の事象を仮想世界に当て嵌めて表現している。
     登場人物や地名、固有名詞に関しては基本的に想像上のものとする。

capitolo 0(序章)

それは一通のメールから始まった。
「会いたいの。来週にでも来て頂けるなら都合の良い日を知らせ下さい。」
事務的な文面はどこか距離を置きたい気持ちの表れだろうか。

これまで何度その心の扉を叩いただろうか?
初めの頃はまるでそこには居ないかの様に何の反応も見せなかった。
だが私はその扉の向こうに誰がいるかは分かっていたから諦めず叩き続けた。
ある時は遂に声が返ってきた。
だが扉は固く閉ざされたままだった。
その後も壁と向き合ってる様な状態が永遠かと思うほどの時間が流れた。
そして今、その重々しい扉は開こうとしている。
私は少し開いた隙間から漏れる光を見た。


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